第9章


文字列


Mac OS Xは、ユーザとコンピュータの相互作用における第一義として画像を用いますが、文字列もボタン名、ポップアップメニューのラベル、ダイアログメッセージ、画面上のヘルプといった、インタフェースのいたるところにみられます。文字列を一貫して明確に用いることは、インタフェースデザインの必須要素です。

あなたの製品開発部隊は、取扱説明書と同様に、ユーザ見えする画面上の文字列のすべてを評価することに責任を持つ技術ライターを含んでいなければいけません。ライターはアップル特有の専門用語のガイダンスのために、Apple Publications Style Guideを参照する必要があります。

フォント

Mac OS Xはインタフェース要素のための標準的なフォントに対応しています。あなたのアプリケーションがフォントを指定するときは常に、表 9-1(122ページ)に示すシステム定義の定数を使用してください。特定のフォントとポイント数を使用することは避けてください。システム定数を使用することであなたのアプリケーションが常に適切なフォントを、Mac OSの変更に関わらず表示するということを保障します。

システムフォント(Lucida Grande Regular 13 point)は、メニュー、ダイアログ、標準の大きさのコントロール内の文字列に使用されます。

強調されたシステムフォント(Lucida Grande Bold 13 point)は、控えめに使用しましょう。警告表示において本文の文字列に使用されます(図 13-29(210ページ)を参照)。

小型システムフォント(Lucida Grande Regular 11 point)は、警告表示内の参考情報文字列に使用されます(図 13-29(210ページ)を参照)。また一覧の列見出しのデフォルトフォントや、ヘルプタグ、小型コントロールに使用されます。また、あなたはQuickTime環境設定での使用例のように、さまざまなウインドウの中で、設定に関する補足情報を提供するために使用することができます。

強調された小型システムフォント(Lucida Grande Bold 11 point)は、控えめに使用しましょう。あなたはこれをグループボックスを使わずに現れる、設定のグループのタイトルや、文字列入力欄の下の、概要を示す参考情報文字列に使用することができます。

ミニシステムフォント(Lucida Grande Regular 9 point)は、ミニコントロールに使用されます。また、ユーティリティウインドウのラベルや本文に使用することもできます。

強調ミニシステムフォント(Lucida Grande Bold 9 point)は、強調小システムフォントでは大きすぎる場合に利用できます。

あなたのアプリケーションが文字列文書を作成するなら、ユーザ作成内容のためのデフォルトフォントとしてアプリケーションフォント(Lucida Grande Regular 13 point)を使用しましょう。

ラベルフォント(Lucida Grande Regular 10 point)は、ツールバーボタン上のラベルや、通常の大きさのスライダーの目盛り表記のために使用されます。あなたがこのフォントを使う必要のあるときはまれであるべきでしょう。スライダーコントロールのラベルにこのフォントが使用される例としては、Dock環境設定の「Dock サイズ」スライダーを参照してください。

表示フォント(Lucida Grande Regular 12 point)は、一覧と表の中の文字列のデフォルトフォントとして使用しましょう。

Lucida Grandeフォントファミリは固定幅の数字と可変幅のアルファベットを含む点に気を付けてください。

あなたのアプリケーションにおけるユーザ見えする文字列は、すべてアンチエイリアスされる必要があります。もしあなたが標準システムフォントのいずれかを使用していれば、これは自動的に行われます。

表 9-1はCarbon関数で用いる定数と、Cocoaで用いるNSFontメソッドを示します。

表 9-1 システムフォントのためのCarbon定数とCocoaメソッド

フォント Carbon定数 Cocoaメソッド
システムフォント kThemeSystemFont [NSFont systemFontOfSize:[NSFont systemFontSizeForControlSize:NSRegularControlSize]]
強調されたシステムフォント kThemeEmphasized-SystemFont [NSFont boldSystemFontOfSize:[NSFont systemFontSizeForControlSize:NSRegularControlSize]]
小型システムフォント kThemeSmallSystemFont [NSFont systemFontOfSize:[NSFont systemFontSizeForControlSize:NSSmallControlSize]]
強調された小型システムフォント kThemeSmall-EmphazisedSystemFont [NSFont boldSystemFontOfSize:[NSFont systemFontSizeForControlSize:NSSmallControlSize]]
ミニシステムフォント kThemeMiniSystemFont [NSFont systemFontOfSize:[NSFont systemFontSizeForControlSize:NSMiniControlSize]]
強調されたミニシステムフォント 利用できません [NSFont boldSystemFontOfSize:[NSFont systemFontSizeForControlSize:NSMiniControlSize]]
アプリケーションフォント kThemeApplicationFont [NSFont userFontOfSize:0.0]
ラベルフォント kThemeLabelFont [NSFont labelFontOfSize:[NSFont labelFontSize]]

スタイル

【ここでのスタイルとは「スタイル付きテキスト」「ボールドスタイル」のような書式情報ではなく、作文の作法、形式を指しているらしい。】

The Apple Publications Style Guide はスタイルと語法の話題を扱い、アップルがどのように言語を使用するかについてのキーの索引【?】でもあります。この文書はthe User Experience Reference Libraryで利用できます。特定の用語について好まれるスタイルに関して、疑問があればいつでもこれを調べましょう。

the Apple Publications Style Guideでは扱わない話題に関しては、アップルはこのほかに3つの作品を推奨します。The American Heritage Dictionary【英英辞書】、The Chicago Manual of Style【専門的な作文マニュアルらしい】、Words Into Type【専門的な作文マニュアルらしい】です。これらの書籍が規則の競合をもたらすときは、語法についての疑問に関してはThe Chicago Manual of Styleを優先し、綴りについての疑問に関してはThe American Heritage Dictionaryを優先します。

このセクションの残りの部分では、あなたの文字列をアクア ユーザインタフェースと適切に調和するスタイルで提示する方法について、特定の詳細部分について述べています。

文章の間に空白を挿入する。

もし、あなたのアプリケーションのユーザインタフェースに、1つの段落内で2つ以上の文章を表示する部分があれば、ある文章の最後にある句読点と次の文章の最初の単語の間に、必ず単一の空白を挿入するようにしてください。

アプリケーションのユーザインタフェースにはたくさんの文字列があり、これらはラベル形式で短い文句ですが、アプリケーションヘルプ、警告表示、ダイアログはしばしば文字列の長いブロックを含んでいます。あなたはこれらの文字列ブロックについて、文章の間に余計な空白が現れないことを確実にするために、調査する必要があります。

省略文字を使用する

ボタンやメニュー項目の名前の中で現れるとき、省略文字(…)は関連付けられた操作が行われる前に補足情報を要求されるということをユーザに示しています。具体的には、省略文字はユーザに、コマンドが実行される前に選択や情報の入力をさせるウインドウやダイアログが出現することを予期するための心の準備をさせます。

ユーザはボタンとメニュー項目が即座に動作することを想定しているので(「ボタン」(231ページ)と「メニューのふるまい」(149ページ)で説明されている通り)、このふるまいの変化について、省略文字を適切に表示することでユーザに心の準備をさせることは特に重要です。

以下のガイドラインと例は、あなたがメニュー項目やボタンの名前で省略文字を使用すべきときを判断するために役立つでしょう。

関連付けられた動作が以下の場合に、ボタンやメニュー項目の名前に省略文字を使用してください…

  • ユーザからの指定入力を必要とする場合。

    たとえば、「開く」、「検索」、「プリント」コマンドはいずれも省略文字を使用します。なぜならユーザは開く、検索する、印刷するための項目を、選択したり入力する必要があるからです。「別名で保存」コマンドも省略文字を使用します。なぜならこのコマンドは、ユーザにファイルや文書の新しい名前、保存場所、もしくは両方を指定できるようにするからです。

    この種類のコマンドは、実行する前に指定のための問いかけに答える必要があるかどうかで(「何を検索する?」といったように)判断することができます。

  • ユーザにより実行されるのが分割したウインドウやダイアログの中である場合。

    たとえば、「環境設定」、「ツールバーのカスタマイズ」、「意見を送る」はいずれも省略文字を使用します。なぜなら、これらはユーザが環境設定を行い、ツールバーをカスタマイズし、もしくは意見を送るためのウインドウ(ブラウザといった別のアプリケーションの可能性もあります)やダイアログを開くからです。

    なぜこのようなコマンドは省略文字を含む必要があるのかを理解するためには、省略文字の欠如が意味する、ユーザのためにアプリケーションが行う動作を検討してください。たとえば、もし、「意見を送信する」コマンドに省略文字が含まれていなかったら、アプリケーションによって自動的に意見が生成され、送信されるという意味になってしまうでしょう。

  • 常にユーザに危険な結果の可能性を警告し、代わりの選択肢を提供する警告表示を行う場合。

    たとえば、「再起動」、「システム終了」、「ログアウト」はいずれも省略文字を使用します。なぜならこれらは常にユーザに確認を求め、ユーザが動作を取り消すことができるようにする警告表示を行うからです。「閉じる」は省略文字を持たないことに注意してください。なぜなら、特定の状況でのみ警告表示を行うからです(具体的には、保存されていない変更のある文書やファイルが閉じられるときだけです)。

    あなたが常に警告表示を行うコマンドを提供する前に、毎回ユーザの同意を得ることが本当に必要なのかを判断してください。ユーザの確認を問う警告表示をあまりにもたくさん表示することは、警告表示の効果を薄めることになるでしょう。

関連付けられた動作が以下の場合には、ボタンやメニュー項目の名前に省略文字を使用しないでください…

  • ユーザからの指定入力を必要としない場合。

    たとえば、「新規」、「保存」、「コピー」コマンドは省略文字を使用しません。なぜなら、いずれもユーザは既に必要な情報を提供しているか、ユーザ入力が必要とされていないからです。つまり、「新規」は常に新規文書かウインドウを開き、「保存」は自動的に現在の活性文書に保存し、「コピー」はユーザが最後に選択した文字列や項目をクリップボードにコピーします。

  • ユーティリティウインドウを開くことで完了する動作の場合。

    ユーザはある項目についての情報を見るために、または必須の、作業固有の、常時利用できるコントロールを出しておくために、ユーティリティウインドウを開きます(ユーティリティウインドウの詳細については、「ユーティリティウインドウ」(202ページ)を参照)。そのため、ユーティリティウインドウを開くためのコマンドは、ウインドウの表示により完了し、その名前に省略文字を持つ必要はありません。このようなコマンドの例としては、「情報を見る」、「このアプリケーションについて」、「インスペクタを表示」があります。

  • 時おりユーザに危険な結果の可能性を警告する警告表示を行う場合。

    もしあなたが時々にしか警告表示を行わないボタンやメニュー項目の名前に省略文字を使用すると、あなたはユーザに常に何かが起こるわけではないということを予期させてしまいます。これはあなたのアプリケーションのユーザインタフェースの一貫性をなくし、混乱させます。そのため「終了」や「閉じる」コマンドが、もし動作を実行したらデータの消失を招くかもしれない(文書に保存されていない変更があるときのように)という警告表示を行うとしても、これらのコマンドはデータを失う可能性のないときは警告表示を行いません。この理由のため、「終了」や「閉じる」といったコマンドは省略文字を含むべきではありません。

また省略文字は、文書のタイトルや一覧の項目において、表示のための空間以上の文字列がまだ存在しているということを示すこともできます。たとえば、もし、ある項目の名前がメニューや一覧ボックスに合わせるには長すぎるとき、あなたは名前の始まりと終わりを維持したまま、名前の中央に省略文字を挿入する必要があります。この方法は名前のうちもっともユニークであるはずの部分が見えていることを保障します。

重要:省略文字は必ずOption-;(Optionとセミコロン)のキーの組み合わせを用いて作成してください。これはメニューが読めないユーザに、補助アプリケーションが正確な文字の解釈を提供できることを保障します。もしあなたが3つのピリオドを用いて省略文字をまねると、補助アプリケーションの多くはこれらについてつじつまが合わなくなることでしょう。また、3つのピリオドと省略文字は同じには見えません。ピリオドは省略文字の点とは異なる余白が挟まれるからです。

コロン文字を使用する

コントロールのための文脈を導入し、提供する文字列の中でコロン(:)を使用してください。こうした文字列はコントロールが何をするか、またはユーザがこれらコントロールを用いることで行うことができる作業を説明することができます。導入文、コロン、コントロールの連携は、視覚的に独立したグループを形成し、ユーザが特定の作業に適用されるコントロールを見つけコントロールが何をするかを理解することの手助けをします。

コロンは説明文と特定のコントロール、またはコントロールの組み合わせとの間を直接結びつけることを意味しているので、押しボタンの名前やコマンドポップダウンメニューのタイトルといった、コントロール内に現れる文字列には属しません。同様に、あなたは以下のユーザインタフェース要素内に現れる文字列の中では、コロンを使用すべきではありません…

  • メニュー項目(コロンがユーザの作成したメニュー項目の一部である場合は除く)とメニュータイトル
  • タブと分割されたコントロール
  • リスト表示の列見出し

注:コロンはMac OS Xではパス名の区切り文字として使用しません。もし生のパス名を表示する必要があれば、フォワードスラッシュ(/)を使用してください。ウインドウのタイトルにパス名を表示するようなことは、常に、確実に、避けてください。

コロンは導入文と、関連するコントロールを結びつける良い方法ですが、あなたはこの結びつきを別のやり方で表現することもできるということを認識しましょう。

たとえば、あなたは関連するコントロール群をグループボックスの中に配置し、導入文をグループボックスのタイトルとして表示することを選んでもかまいません(グループボックスのガイドラインは「グループボックス」(284ページ)を参照)。

もしくは、分割線を用いてウインドウを関連するコントロールのセクションに分割し、それぞれの分割線にそろえたセクションのタイトルを表示してもよいでしょう(分割線のガイドラインは「分割線」(283ページ)を参照)。

また、関連するコントロールのさまざまなグループを表示するために、タブや分割されたコントロールを用いることもできます(これらのコントロールの使いかたのガイドラインは、「タブ表示」(279ページ)と「分割コントロール」(244ページ)を参照)。

これらのさまざまなグループ化の手法が用いられたときに、どのようにウインドウの外見が変化するかを参照するには、「ウインドウ内でコントロールをグループ化する」(303ページ)を参照してください。

もしあなたが、コントロールをグループ化するために、グループボックスか分割線を用いることを選んだのであれば、グループボックスのタイトルとして従属する文字列や、分割線と同じ行に現れる文字列の中では、コロンを使用しないでください。これらの場合には、他の画像要素(つまり、グループボックスと分割線)がコロンの役目を果たし、導入文とそれに従うコントロールとの明確な結びつきを作り出します。

たとえば、図 9-1はグループボックスのタイトルとして用いられる文字列の中で、正しくコロンが欠如している様子を示します。

図 9-1 グループボックスのタイトルの中ではコロンを使用してはいけません

「画面のコーナーへの機能割り当て」
【システム環境設定・DashboardとExposeより】

もしあなたが、導入文とコントロールの間の結びつきを示すために、コロンを使用することを選択したのであれば、以下のガイドラインと例は、あなたがコロンを適切に使用するために役立つでしょう。

コロンは、コントロールもしくは関連するコントロールの組み合わせを先導する導入文の中で使用してください。【導入文の】文字列はコントロールの対象、もしくはユーザが行うことのできる作業のいずれかを説明する名詞、もしくは語句となります。以下の例はこの文字列とコントロールによる取り合わせのいくつかの変種を図示します…

  • 図 9-2はコントロールの作用する機能を説明し、コントロールと同じ行に現れる導入文における、正しいコロンの使用法を示しています。

    図 9-2 コントロールと同じ行で先導する文字列でコロンを使用する

    「強調表示色:【パープル】」
    【システム環境設定・アピアランスより、ラベルの右にポップアップメニューボタン】

  • 図 9-3に示す導入文は、ひとつ以上のコントロールに適用される作業を説明しています。二つのチェックボックスが近接していることと、説明文の中のコロンは、両方のコントロールがこの作業に影響を与えるために使用できることを、ユーザに示唆しています。

    図 9-3 垂直に並んだコントロールの一覧の最初のコントロールを先導する文字列でコロンを使用する

    「DVDプレーヤーを開いたとき:■フルスクリーンモードにする」
    「              ■ディスクの再生を開始」
    【DVDプレーヤー環境設定より、ラベルの右にチェックボックスが垂直に並んでいる】

  • 図 9-4における文字列とコントロールのグループ化は、複数のコントロールに導く文字列でのコロンの別の使いかたを示しています。

    図 9-4 水平に並んだコントロールの一覧の、最初のコントロールを先導する文字列でコロンを使用する

    「シャッフル:●曲単位 ○アルバム単位 ○グループ単位」
    【iTunes環境設定より、ラベルの右にラジオボタンが水平に並んでいる】

  • コントロールの上に現れ、それを説明している導入文は、図 9-5に示すとおりコロンを含んでいる必要があります。

    図 9-5 コントロールの上に現れる導入文でコロンを使用する

    「解像度:」
    【システム環境設定・ディスプレイより、ラベルの下に解像度の一覧がある】

  • もし文字列がラジオボタンやチェックボックスの状態を説明し、さらに第二のコントロールへ導く場合は、図 9-6に示す通り第二のコントロールの前にコロンを含む必要があります(もしチェックボックスやラジオボタンの状態を説明している文字列が、第二のコントロールへ導かないのであれば、コロンは含むべきではないという点に注意してください)。

    図 9-6 第二のコントロールへ導くチェックボックスや、ラジオボタンの文字列でコロンを使用する

    「■画面を変更:スリープからの復帰時」
    【該当例見つからず・チェックボックス、ラベル、ポップアップメニューボタンが水平に並んでいる】

    注:もしあなたが図 9-6に示す種類の配置を用いるのであれば、先行するチェックボックスやラジオボタンが選択されていないときは、確実に第二のコントロールを使用不能にしてください。

文章や語句の一部であるコントロールの前にコロンを置くことは任意です。このガイドラインに柔軟性があるのは、コントロールに続く文字列の数がいくつであるかとか、文章や語句がどのように解釈されるかに依存するからです。以下の状況において、コロンを使用するかどうかのあなたの判断に応じて、文字列、コントロール、そしてあなたのウインドウ全体の配置の特定の組み合わせを検討してください。

たとえば、もし、コントロールに続く文字列がなければ、コントロールの値が文章や語句の終わりを補います。この場合はコロンを置くことが推奨されます。なぜならこれはコントロールを先導する文字列にコロンを含めるガイドラインの、別のバリエーションだからです。図 9-7はこの種類の文字列の例を示します。

図 9-7 コントロールの値で完了する文章ではコロンが推奨される

「コンピュータがスリープするまでの待機時間:」
【システム環境設定・省エネルギーより、ラベルの下に「x分|x時間」のスライダがある】

一方、もし、文章や語句の重要な部分がコントロールに続くのであれば、図 9-8に示すように、コロンは任意です。

図 9-8 コントロールに続く文字列が文章の重要な部分を形成するのであればコロンは任意

「□完了してから【 7 】日後に項目を隠す」
【該当例見つからず、チェックボックス、ラベル、テキストボックス、ラベルが並んでいる】

同様に、コントロールに続く文字列がいくつかあっても、それが文章や語句の重要な部分を表していなければ、コロンは任意です。これらの場合にコロンが適切であるかどうかをあなたが決める指針として、コロンの存在が文章や語句(コントロールの値を含む)をぎこちない、もしくは不自然なやり方で中断するのか、を判断してください。

インタフェース要素のためのラベル

インタフェース要素のためのラベルは、理解しやすいように作成し、できるだけ専門用語や符丁を避けましょう。ラジオボタン、チェックボックス、押しボタンといった、ユーザの選択を要求する要素は、いずれもできるだけ明確にするように心がけてください。簡潔さは大事ですが、余白の都合で明快さを犠牲にしてはいけません。インタフェース要素のラベルにおける単語の大文字始まりの正しいやり方についての情報は、「インタフェース要素のラベルと文字列の大文字始まり」(128ページ)を参照してください。

ダイアログを生じるメニュー項目とボタンは、省略文字(…)を含む必要があります。省略文字を使用するときの詳細は「省略文字を使用する」(123ページ)を参照してください。ダイアログのタイトルは、それを発生させたメニューコマンドやボタンのラベル(省略文字を除く)と同じである必要があります。

インタフェース要素のラベルと文字列の大文字始まり

インタフェース要素のラベルは、すべてタイトル形式か文章形式のいずれかで大文字始まりにする必要があります。これをどのようにして行うかの例は、表 9-2(128ページ)を参照してください。

タイトル形式とは、以下の場合を除くすべての単語を大文字始まりにすることを意味します…

  • 冠詞(a, an, the)
  • 等位接続詞(and, or)
  • 3文字以下の接続詞、ただし“Starting Up the Computer.”のように、前置詞が動詞句の一部である場合を除きます。

タイトル形式では、最初と最後の単語は、それが冠詞、接続詞、3文字以下の前置詞であったとしても、常に大文字始まりとなります。

文章形式とは、最初の単語を大文字始まりにして、残りの単語は小文字としますが、固有名詞や固有形容詞は例外とする、ということを意味しています。ダイアログの中では完全な文章の後でのみピリオドを使用してください。

表 9-2 画面上の要素の正しい大文字始まり

要素 大文字始まりの形式
メニューのタイトル タイトル Highlight Color
Number of Recent Items
Location
Refresh Rate
メニュー項目 タイトル Save as Draft
Save As…
Log Out
Make Alias
Go To…
Go to Page…
Outgoing Mail
押しボタン タイトル Add to Favorites
Don’t Save
Set Up Printers
Restore Defaults
Set Key Repeat
完全な文章ではないラベル(たとえば、グループボックスや一覧の見出し) タイトル Mouse Speed
Total Connection Time
Account Type
厳密な意味のラベルではない選択肢(例えば、ラジオボタンやチェックボックスの文字列)完全な文章ではない場合も含む 文章 Enable polling for remote mail
Cache DNS information every ___ minutes
Show displays in menu bar
Maximum number of downloads
ダイアログの本文 文章 Are you sure you want to quit?

インタフェースで短縮形を使用する

ポップアップメニューの中でのように、空間が貴重なときは、語句の意味にとって必須ではない単語を縮めた長さの、短縮形を使用することができます。たとえば、メニューに以下の項目を含めることができます…

Don’t Allow Printing
Don’t Allow Modifying
Don’t Allow Copying

どの場合においても、省略することが、各々の項目の操作に関する単語を変化させることはありません。もし、“contains”と“does not contain,”のように、省略することが、語句の中の単語を著しく変化させるのであれば、短縮形を避けたほうが明確でしょう。

また、翻訳や各国語化が難しそうな、一般的ではない短縮形も使用するのは避けるべきです。特に、あなたが避ける必要があるのは…

  • "Apple's going to announce a new computer today."といった文章において、名詞と動詞を用いた短縮形を形成することは避けましょう。
  • "it'll"とか"should've."といった、一般的ではない短縮形を使用するのは避けましょう。

インタフェースで略語や頭字語を使用する

【頭字語:頭文字を並べた略語】

略語や頭字語はユーザインタフェースにおける空間を節約できますが、ユーザがその意味を知らなければ混乱させることになるでしょう。逆に、ある略語や頭字語はこれらが表している単語や語句よりもよく知られており、一字一句を書き下した方を用いたアプリケーションは時代遅れで冗長にみえることがあります。

これら2つの検討事項の釣り合いを取るため、あなたは用語の中における頭字語や略語の、あなたのアプリケーションのユーザに対する適切さを測る必要があります。このため、あなたは略語と頭字語を使用すべきかを判断する前に、あなたのユーザ視聴者を定義して、あなたのアプリケーションが行う作業に対するユーザの心のモデルを理解する必要があります。これらの概念の詳細は、「あなたの視聴者を熟知せよ」(25ページ)および「ユーザの心のモデルを反映せよ」(40ページ)を参照してください。

あなたのアプリケーションのユーザインタフェースにおいて、特定の略語や頭字語を使用すべきか否かを判断する指針とするために、以下の問いかけについて検討してみましょう…

  • その頭字語もしくは略語はあなたのユーザが理解しており、使っていて快適に感じられますか?たとえば、ほぼすべてのユーザは「コンパクトディスク」の略語として「CD」を用いることに慣れているので、初心者ユーザ向けを意図したアプリケーションであってもこの略語を使用することができます。

    一方、色空間や、カラー印刷を用いた仕事をするユーザを意図したアプリケーションは、「CMYK」(シアン、マゼンタ、イエローの色調を表す)を用いることができます。ですが、この略語は幅広い範囲のユーザにはなじみがないでしょう。

  • 書き下した単語や語句は、頭字語や略語に比べて認識しにくいですか?たとえば、ユーザの多くは「Cc」が、もともとは紙の文書の複数コピーを作成するために、カーボン紙を使用していた習慣である、カーボンコピーという語句を意味していたということを知らないでいます。くわえて、「Cc」と「カーボンコピー」の意味は乖離しているため、もはやこれらは同義語ではありません。従って、「Cc」の代わりに「カーボンコピー」を使用することは、ユーザを混乱させることでしょう。

    いくつかの略語と頭字語に対しては、単語や語句を几帳面に書き下すことは、あいまいな意味に取れます。たとえば、「DVD」は本来「デジタルビデオディスク」と「デジタルバーサタイル【多目的】ディスク」の両方を意味していました。この両義性のために、どちらかの語句を用いることは役に立ちません。「DVD」を使用したほうがずっと明快です。

もし、あなたのアプリケーションのユーザヘルプブックで、なじみがないかもしれない頭字語や略語を使用するのであれば、あなたがはじめてその言葉を使用するときに、必ずそれを定義してください。くわえて、あなたのヘルプブックはユーザがなじみのない用語の定義を簡単に見つけられるように、検索できるようにする必要があります。ヘルプ技術の概要は「ユーザ補助」(73ページ)、そしてアップルヘルプを用いた作業の詳細はProviding User Assistance With Apple Help (Revision; Preliminary) を参照してください。

開発者用語とユーザ用語

技術的な隠語やプログラミング用語を、インタフェース要素やユーザ向け文書の中で使用してはいけません。表 9-3はいくつかの例を示しています。より多くの例はApple Publications Style Guide(Mac OS X developer documentationウェブサイトで利用できます)にあります。

表 9-3 開発者用語をユーザ用語に翻訳する

開発者用語 同じ意味のユーザ用語
データブラウザ スクロールする一覧 もしくは 複数の列を持つ一覧
ダーティドキュメント 保存されていない変更のある文書
フォーカスリング 強調表示された領域、ユーザ入力を受け付ける用意のある領域
ユーザ見えする文字列 画面上の文字列
マウスアップイベント マウスクリック
リブート 再起動
文字列の長さ 文字数

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